売上を、減らそう

From 田崎裕史
自宅の小部屋より

佰食屋を知っていますか?
1日100食しか作らない京都の食堂で、社長の中村朱美さんが、カンブリア宮殿など数々のメディアに取り上げられ話題になっています。

2017年、「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれ、2019年には、ウーマン・オブ・ザ・イヤーを受賞。

冒頭の「売上を、減らそう」は、そんな中村さんが書いた本のタイトルなのです。何度も衝撃的なタイトルです。

ところが、amazonの書評を見てみると、賞賛だけでなく、以外にも結構辛辣な意見も並んでいる・・・。

いったいどういう内容なの?
疑問を持った私は、早速買って、読んでみました。

まず表紙には刺激的な文字が並びます。

・営業わずか3時間半
・どんなに売れても100食限定
・飲食店でも残業ゼロ
・たどりついたのは業績至上主義からの解放
・社員を犠牲にしてまで「追うべき数字」なんてないー。
・「社員の働きやすさ」と「会社の利益」の両立・・・京都の小さな定食屋が生んだ「奇跡のビジネスモデル」とは?

とても興味湧きますよね??

まず、佰食屋はその名の通り、1日100食に限定することで、飲食業にしては珍しく、正社員も含めて短時間労働。社員は残業がないため、家族で夕飯を食べることができる。

メニューを限定することで、業務を単純化。高齢者、身体障害者、シングルマザーなど、いわゆる社会的弱者とされる人々に、活躍する場を提供している。

集客は、自分がSNSやら講演やらを行うことで、まかなうため、広告費は必要ない。その分、原価率と人件費率を上げて、よい商品を提供し、顧客満足度と社員満足度を上げる。
業界では、原価率と人件費率を合わせて50−55%が妥当とされている中で、佰食屋では、なんと、80%をかけているらしいです。

常識に反したことを行う。
だから、うまくいく。
なるほどなあと思いました。

そして、「自分が雇われの時、嫌だったことは、社員も嫌なはず。そんな自分の理想を追求する。」
「会社が儲かっても社員が報われないのはおかしい。」
「だから、利益はギリギリで売上は一切伸ばさない」

と、この方針に至ったそうです。

前半はそんな感じでした。
実は後半は突っ込みどころ満載なのですが、それは今回ひとまず置いておいて、、、

この方の経営戦略の最大の特徴は、売上を限定すること。

増収増益の経営計画を立てるのが常道ですが、敢えて売上を限定するという戦略をとり、それが話題となったわけです。

ですが、当然、売上を限定すれば、どれだけ工夫しても、利益も限定されます。当然、現実として伸ばしていくこともできないでしょう。

つまり、社員が成長してもそれに報いることはできないし、社員の生活のステージが変化して、例えば、結婚し、子供ができ、家が欲しいとなっても収入面でサポートするのは困難であるということです。

確かに、日本は人口が減少する局面であり、単純な拡大路線、右肩上がりの戦略はもはや容易に成立し得ないと思います。特に、私たち美容業や士業のように、サービス業はより当てはまると思います。

また、スタッフの価値観も多様化していますし、新しい時代に則した、新しい働き方を提供することも必要だとは思います。

個々の夢はいろいろあっていいと思いますし、会社経営の目的地もいろいろあってよいと思います。

ただ、「毎年利益ギリギリで、売上も一切増やさない」ビジネスモデルは、どうなのか?

利益がないから、ちょっと災害があるだけで、途端に雇用危機になる。
会社全体の売上が増えないから、給料はいつまでたっても、どれだけ頑張っても増えようがない。
これは、真実。自明の理。

その事実を踏まえた上で私はこう思います。
決めるのは自分、だと。

ひたすら拡大路線を描くのか、安定成長を目指すのか、売上を限定するのか。
ただ、経営者は、採用した戦略によって起こりうるデメリットも甘んじて受けなければいけない。
はじめから売上を限定するなら、その分、社員に将来を見せるのは難しくなるでしょう。

「社員を幸せにしたい」
その思いは筆者に限らず、まともな経営者なら皆持っていると思います。
そういった中で、あなたは何を取り、何を捨てるのか。

私たちが、事業をやり抜くのに、人生を生き抜くのに、何を選ぶのかは自由ですが、同時に、そのリスクも甘受しなければいけないのではないでしょうか?

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