「今期はかなり利益が出そうなので、税金対策で中古車を買おうと考えているんだ」というような話を聞いたことはありませんか?
いったいどうして、中古車を買うのが税金対策になるのでしょうか。
理屈を理解して、場合によってはうまく活用できるよう、個人事業と法人、新車と中古車、それぞれのケースでの税務上の取り扱いの違いを確認してみましょう。
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1. 車を購入した場合
事業を営む上で、車を購入して事業で使用する場合は、購入した際の費用や維持費用は事業上の経費になります。
一般的に車を購入すると数十万から数百万はかかりますので、購入した際に支払った金額がすぐに全額、経費になるわけではありません。
購入価格を資産に計上したうえで、耐用年数に従って何年間かにわけて減価償却費として段階的に経費に計上していきます。
30万円以内であれば、少額特例などの処理も選択肢にあがります。
なお、個人事業と法人の場合では、減価償却の方法やその他の扱いが異なります。
1-1. 個人事業の場合
原則として、償却方法は定額法となります(事前に税務署に届出を出せば定率法も選択可能)。
定額法の場合、耐用年数の期間内は均等に減価償却費を計上していきます。
個人事業の場合、車を事業にもプライベートでも使う、ということが多いかと思います。
そういう場合は、事業とプライベートで使う割合などを予め設定したうえで、事業で利用する部分だけを経費に計上します。
その他、車の保険料や自動車税、駐車場利用料なども同様に、事業で使う部分を経費に計上します。
1.2. 法人の場合
原則として、償却方法は定率法となります(事前に税務署に届出を出せば定額法も選択可能)。
定率法の場合、購入した最初の方は減価償却費が多めに計算され、年数が経過するごとに計上できる減価償却費が少なくなっていきます。
法人の場合、法人名義で車両を購入し、法人の資産として計上します。
一般的な法人は営利活動を行うのが目的ですから、法人での事業活動を行うために購入した車の減価償却費だけでなく、自動車保険や駐車場代、ガソリン代などの費用も、法人の経費として計上することになります。
2. 車の耐用年数
車を購入して減価償却する場合の法定耐用年数は、一般的な乗用車の場合、6年です。
ただし、これは新車で購入した場合の耐用年数で、中古車の場合は下記の計算式(簡便法)で算定した耐用年数で減価償却を行うことができます。
法定耐用年数-経過年数+(経過年数×20%)
(1年未満の端数は切り捨てる。中古の耐用年数は最低でも2年)
この計算式に当てはめると、購入した中古車の経過年数が5年以上の場合は、耐用年数を2年として減価償却ができる、ということになります。
3. 減価償却費の計算
減価償却費は次のように計算します。
事業年度の途中で購入し、使用を開始した場合は、月割計算になります。
3-1. 定額法
車の取得価額×定額法の償却率×車を使用した月数÷事業年度の月数
3-2. 定率法
- 1年目
車の取得価額×定率法の償却率×車を使用した月数÷事業年度の月数 - 2年目以降
(車の取得価額−減価償却累計額)×定率法の償却率×車を使用した月数÷事業年度の月数
4. 中古車を購入すると税金対策になる理由
事業で使用する中古車を購入して、耐用年数を短く見積もって計算できれば、同じ金額の新車よりも短期間で減価償却費が計上されることになります。
さらに法人の場合、定率法で減価償却費を計算するため、購入した当初の金額が大きくなります。
せっかく利益も出ているし、どうせなら多めに経費にできるもので必要なものを買おうか、という場合に「新車より中古車」という話が出るのは、こういった理由があるのです。
まとめ
法人と個人、新車と中古車では、税務上の取り扱いが異なります。
減価償却の計算という点では中古車が得なようでもありますが、そもそも業務に必要なものであれば、古すぎて維持管理に手間がかかっては困るかもしれません。
車の購入は金額が大きくなることも多いですから、購入を検討される際には税務上の取り扱いを理解されておくことをおすすめします。
出典・参考サイト
No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|国税庁