「個人事業として美容室を開業して早3年、売上の増加に伴って増え続ける税金はどうしたものか…」などと、悩まれる方も多いかと思います。
知り合いなどに相談すると法人成り(法人設立)を勧められることも多いのでないでしょうか。
そこで今回は理美容業を営む方が法人成り(法人設立)をするにはどのような手続きや準備を行えばよいのかご紹介したいと思います。
目次 |
1. 法人設立までの流れ
法人設立までの流れはおおよそ以下の通りとなります。
- 司法書士への依頼
- 書類の準備
- 法人形態の決定
- 株主・役員の決定
- 資本金の決定
- 法人名の決定・法人印の作成
- 定款の作成・認証
- 出資金の振込
- 法務局への申請
では、それぞれの具体的な内容を確認していきましょう。
2. 司法書士への依頼
法人設立のゴールは法人設立登記が完了することです。
登記まで全て独力で行うことは可能ですが、司法書士に依頼をして手続きを行うことお勧めします。
手続き上の思わぬミスを防ぐことができ、また、特に後述の定款作成などにおいて、専門家目線の有用なアドバイスを受けることができるためです。
3. 書類の準備
免許証などの身分証のほかに個人の印鑑登録証明書が必要になります。
市役所等で取得しておきましょう。
4. 法人形態の決定
法人の形態にはいくつか種類がありますが、通常は株式会社か合同会社のどちらかの形態で設立することになります。
合同会社は株式会社に比べて少ない費用で設立ができることが特徴の一つですが、議決権の取り扱いなど、会社運営上のルールも株式会社と異なるため注意が必要です。
それぞれの特徴を理解したうえで法人の形態を選ぶことが重要です。
5. 株主・役員の決定
株式会社の場合、会社の持ち主である株主と、経営を任される役員は、それぞれ別物です。
中小企業の場合、一般的には株主=代表者であることが多いですが、上場している会社であれば会社に直接関係のない個人でも株主になれます。
一方、合同会社の場合は原則として所有と経営が一致します。
ここではわかりやいすように、株式会社の場合でご説明します。
5-1. 株主の決定
会社に対して誰が出資を行うか、つまり誰が持ち主になるのかを決定します。
個人事業主でお店のオーナーだった方がメインで出資を行うのが一般的です。
5-2. 役員の決定
株式会社の場合は、少なくともひとりは役員(取締役)を決める必要があります。
取締役がひとりの場合は、その方が会社を代表することになります。
複数の取締役がいる場合には、代表取締役を決める必要も出てきます。
株主と役員が同じである必要はありませんので、お店のオーナーが株主、かつ、代表取締役となり、店長などの幹部の方が取締役になる、といった設計も可能です。
6. 資本金の決定
会社設立時に誰が、どのくらいの金額の資本金を出資するかを事前に決定します。
資本金とは株主から集めた会社の元手のことです。
資本金1円から設立が可能ですが、設立当初の法人運営の資金にもなるため、あまり少なすぎると運営に支障をきたす恐れがあります。
逆に高すぎるのにも注意が必要です。
例えば資本金1,000万円以上で設立すると、設立1期目から消費税の課税事業者となりますので、税負担が増える可能性があります。
7. 法人名の決定・法人印の作成
7-1. 法人名の決定
会社の名称を決めます。
ただし、どのような名称でも自由に登記できるわけではありません。
会社について世間に誤った認識をさせないよう、会社法、商業登記法など、様々な法律上によってルールが設けられています。
7-2. 法人印の作成
会社の名称が決まったら、法人の印鑑を作成します。
ここでいう法人印は法人の印鑑登録を行うためのもの、つまり代表印(実印)にするものを指します。
一般的には代表印(実印)・銀行の届け出印・認め印(各印)をまとめて作成することが多いようですが、実務上はひとつだけでも問題はありません。
安全面や管理面を考慮して検討しましょう。
8. 定款の作成・認証
定款とは、会社の事業目的、商号、本店所在地などの会社運営の基本ルールをまとめたものです。
特に事業目的は対外的な信用にも影響するため、誰でもわかるようにはっきり記載しておくことが重要です。
司法書士に依頼をすれば、修正案や助言などをもらえるかと思います。
事業年度(何月決算にするか)も定款で定めますので、決定しておく必要があります。
株式会社の場合は、定款作成後に、公証役場で定款認証の手続きを行います。
司法書士に依頼を行っている場合は、この手続きは司法書士が代理で行います。
なお、合同会社の場合、定款認証の手続きは不要です。
9. 出資金の振込
出資金を発起人の個人口座に振り込みます。
発起人とは、「会社設立の際に資本金の出資や定款の作成などに必要な手続きを行う人」のことを指します。
美容室の場合、オーナーが株主と発起人を兼ねるケースが多いです。
そのため、オーナーのA通帳からB通帳に振込を行う必要があります。
払い込みの完了後、通帳の①表紙、②表紙見開き、③払い込みが記帳されたページをコピーして、登記申請に必要な払込証明書を作成しますので、記録が残るように手続きすることが必要です。
10. 法務局への申請
必要資料をそろえて、法務局で登記申請を行います。
法人登記の申請を行った日が会社の設立日となります。
司法書士への依頼を行っていれば、この手続きも司法書士が代理で行ってくれます。
11. まとめ
会社の設立の設立は事前に決める必要のある事柄が多く、全て独力で行おうとする思わぬミスが発生する可能性が出てきます。
司法書士に手続きを依頼すれば、適宜必要な助言をもらえるため、安心して会社として第一歩目を踏み出すことができるかと思います。
また、設立日や決算期、資本金の決定については税務的な視点も欠かすことはできません。
ちょっとした内容の差で納付税額に大きな差が生じることも考えられるため、司法書士のほかにも税理士に助言をもとめることをお勧めします。
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