人手不足が加速する中、政府は最低賃金引き上げを重要政策のひとつに位置づけています。
近年の賃上げトレンドや、政府・日銀の施策から読み取れる方向性を理解することは、美容室経営においても不可欠です。
本記事では、現在の水準から今後の見通しまで、理美容業界への影響も含めて解説します。

1. 現在の最低賃金（2025年度）

• 2024年10月実施の改定で、全国加重平均は 1,054円／時 に。東京都は 1,163円、大阪は 1,114円 など（例）(Expatica, Nippon.com)。
• 地域によっては900円台の自治体もあり、事業所の所在地によって差がある点に留意が必要です(Expatica, ウィキペディア)。

2. 最近の賃金動向と今後の政府目標

• 2024年は全国平均で50円引き上げ（約5％増）、これは過去最大幅の引き上げ幅でした(Nippon.com)。
• 政府は「中期的に最低賃金を1,500円／時に引き上げる」方針を示しており、従来の“2030年代半ば”から現政権では「2029年末まで」が目標に前倒しされています(hedgethink.com, Deloitte United States)。

3. 今後の予想ペース

• アナリスト予測では、2025年末に向けて 時給1,090円程度に上昇の見込みです(トレーディングエコノミクス)。
• 2025年度は5〜7％前後の上昇率が続く可能性が高く、全国平均は1,100円台へと接近する見通しです(Reuters, Deloitte United States, Reuters, hedgethink.com, The Japan Times)。

4. 経済全体における背景と波及効果

• 日銀は賃金上昇が物価上昇を支えるとし、順調な賃上げが続くことを条件に金融正常化を進めています(Reuters, The Japan Times)。
• 大企業では平均賃上げ率が5％超（2025年春は5.46％）、中小も5％超の水準へ(Nippon.com, Nippon.com, Reuters)。
• 一方で中小企業（特に美容室などの小規模事業所）は、短期的な負担増が重くのしかかっており、政府も補助や融資支援を視野に入れています(Reuters, Reuters)。

5. 美容室経営者としての備えと対策

◉ コスト試算と収支シミュレーション

現スタッフが全員最低賃金で働く場合、例えば時給1,054円→1,200円になった場合の月間・年間の人件費増を早めに試算しましょう。

◉ 価格転嫁の工夫

2025年度以降の賃金上昇に対応するため、サービス料金の見直しやメニュー価格の改定時期を検討する必要があります。
値上げ時にはホームページや予約システムで事前に告知し、顧客の理解を得る工夫を。

◉ 補助金・融資の活用

地方自治体や国の中小企業支援策（賃金上昇に伴う補助金、人材確保支援補助金など）を活用して、賃上げ負担を軽減する手段を確認しましょう。

◉ スタッフ定着と生産性向上

人手不足対策としては、賃金のみならず、働きやすい職場環境や接客スキル向上など、スタッフの定着率アップと一人当たりの生産性向上が鍵です。

6. まとめ

最低賃金は2024年の記録的上昇（+5.1％）に続き、2025年〜2029年にかけてさらに上昇が見込まれます。
美容室では人件費面での影響を抑えるため、早めにコスト試算・価格戦略を立案し、補助金活用や業務効率化で対応を。
スタッフとの信頼関係を築きながら、賃金アップと持続可能な経営の両立を目指しましょう。