美容室経営の中で様々な支払をされると思いますが、その中で家賃や保険料など、
経費を「前払い」するケースがあります。このような費用のうち、一定の要件を満たすと、
実際の支払の際に全額を経費にできる制度が「短期前払費用の特例」です。
この記事では「税法上の短期前払費用」について解説します。
目次
1. 短期前払費用とは
2. 美容室でよくある短期前払費用の例
3. 注意点
まとめ
1.短期前払費用とは
「短期前払費用」とは、法人税法・所得税法上の特例で、以下の条件を満たす場合に、
支払った費用を「支払った年の経費(損金)」として処理できる制度です。
①支払日から1年以内にサービスの提供を受ける
②契約にもとづいて同一のサービスを継続的に受ける
③毎期継続して同じ処理をしていること
④収益の計上と対応させる必要がないこと
⑤決算までに支払うこと
2. 美容室でよくある「短期前払費用」の例
家賃の支払
店舗の賃貸借契約では一般的に「翌月分の家賃を前月末までに支払う」ことになります。
つまり前払です。
原則としては「サービスの提供を受けたとき」に経費として認識しますので、本来は
前払した家賃は「前払費用」として処理します。
しかし、短期前払費用の要件を満たしていれば、支払時に経費として処理することができます。
保険料の支払
店舗の火災保険や事業に関する損害保険を年払いすることはよくあるかと思います。
契約の更新にあわせて毎年の保険料を年払いしているような場合は、短期前払費用として
支払った際に1年分を経費として取り扱うことができます。
3. 注意点
短期前払費用は便利な制度ですが、以下の点に注意が必要です。
1年を超える契約期間の前払は対象外
火災保険の契約で3年分を支払うような場合は、原則どおり、期間に対応した部分が
経費となります。
毎年同じ処理を行うこと(継続適用の原則)
たとえば利益が出た年だけ特例を使うようなことは、税務調査で指摘を受ける可能性が高いです。
サービスの提供時期が支払をした年度内であること
3月決算の会社が3月までに費用の年払いを行ったとしても、例えばサービスの提供時期が
5月からの1年間であるような場合は、短期前払費用には該当しません。
契約内容に沿った支払をしていること
本来は月払いの契約であるにも関わらず、勝手に1年分を支払ったとしても短期前払費用
として認められません。
単発の取引は対象外
継続的なサービスを受ける契約が対象となるため、一定時期に特定のサービスを受けるための前払は対象となりません。
例えば翌年開催される合同説明会の参加費用などは継続的な取引には該当しません。
顧問料は対象外
税理士や弁護士などの顧問料は、毎月の支払金額が定額だったとしても、内容が毎月異なるため、
同一のサービスを継続的に受けるという要件を満たさず、対象にはなりません。
まとめ
日頃、あまり気にすることのない支払の中にも、決算や申告に影響するようなものがあります。
契約の内容や支払方法によっても取り扱いが変わりますので、しっかり確認しておきましょう。
参考 国税庁
タックスアンサー 短期前払費用として損金算入ができる場合
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5380.htm