個人事業開業時の届出

美容師の個人事業主としての独立・開業時に必要な届出や申請について解説

美容師の方が独立して開業する際、開業届を出さなくてはいけない、なんて話を一度は耳にしたことがあるのではないか思います。
新たに自分のお店を開く際、個人事業として事業を行うか、法人として事業を行うのか、主な選択肢はその2つになります。
そして美容業の独立開業は節税などの観点から個人事業からスタートされるケースが圧倒的多数になります。

今回はその個人事業を開業する際、税務的にどのような手続きが必要になるのかご覧いただきたいと思います。

目次

  1. 個人事業の開廃業届
  2. 所得税の青色申告承認申請書
  3. 所得税・消費税の納税地の異動または変更に関する申出書
  4. 給与支払事務所等の開設届出書
  5. 青色専従者給与に関する届出
  6. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請
  7. まとめ

1.個人事業の開廃業届

いわゆる開業届です。
事業を開始した場合、事業開始の日から1か月以内に提出をします。
提出先は納税地を管轄する税務署になります。
なお、後述の2~6で取り上げる届出書や申請書も全て税務署に提出をします。

2.所得税の青色申告承認申請書

こちらの提出は任意です。
青色申告の承認を受けたい事業主が提出をします。
青色申告の承認を受けることで主に以下の特典を利用することができます。

  • 青色申告特別控除(10万円もしくは55万円、一定の条件を満たせば65万円)
  • 青色事業専従者給与の必要経費算入

申請書を提出すればそれでよいというわけではなく、一定水準の正しい会計帳簿をつけることなどが青色申告特別控除などを受けるための条件になります。

3.所得税・消費税の納税地の異動または変更に関する申出書

事業主の納税地は住所地とイコールとなるのが原則です。
そして税務関係の届出は納税地を管轄する税務署に提出を行います。
それによって税務署からの郵送物は納税地あてに送られることになります。
ですが、上記の原則に関わらず、「所得税・消費税の納税地の異動または変更に関する申出書」を提出することで、住所ではなく事業を行っているお店などを納税地とすることが可能です。

4.給与支払事務所等の開設届出書

従業員や後述の青色事業専従者に給与を支払う場合にこの届出書の提出が必要になります。
提出期限は従業員を雇う事務所を開設した日から1か月以内となります。

なお、個人が新たに事業を始めたり事業を行うために事務所等を設けたりした場合には、「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出することになっていますので別途この届出書を提出する必要はありませんが、場合によっては提出を求められることもあります。

5.青色事業専従者に関する届出

配偶者など、家族に給与を支払っても原則として必要経費に算入することはできません。
美容室では、配偶者が自分のお店でスタイリストとして働いている、あるいは裏方の事務作業を行っている、というケースがよくあります。
その場合、この青色事業専従者に関する届出を提出することで、配偶者など家族に支払った給与を必要経費に算入することが可能になります。

この届出に関しては見落としがちな細かいルールがあり、提出にあたっては注意が必要です。
詳しくは別のコラム「青色事業専従者給与の要件について」をご参照ください。

関連記事:青色事業専従者給与の要件について

6.源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請

給与を支給した際に給与から徴収した源泉所得税は原則、徴収した日の翌月10日までに納付をしなくてはなりません。
しかし、給与の支給人員が常時10人未満であれば、7月と1月に半年分をまとめて納付することができるという特例があります。
特例を受けるためには「納期の特例の承認に関する申請書」を事前に提出する必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
従業員や青色事業専従者などがいる場合は必要な届出の数も多くなります。
また、今回のコラムでは紙面の関係上言及できませんでしたが、これらの書類提出をe-Taxで提出するためには別の届出も提出する必要があります。
開業前に不安を感じたら税理士や管轄の税務署にご相談されることをお勧めします。

出典

国税庁|No.2090 新たに事業を始めたときの届出など


美容師の個人事業主としての独立・開業時に必要な届出や申請について解説