個人事業から美容室の経営をスタートし、安定した利益が出せるようになってきたオーナー様の多くは、税金の問題で悩まれているのでないかと思います。
そんな時に「節税をしたいけどどうしたら良いの?」というご相談をよくいただきます。
節税の方法はいくつかありますが、最もオーソドックスな方法が「小規模企業共済」への加入になるかと思います。
今回は小規模企業共済の概要について触れていきたいと思います。
目次
1. 小規模企業共済とはなにか
小規模企業共済とは、小規模企業の経営者の方が廃業または退職後、引退してからの生活資金などのために積み立てる共済です。
共済の掛金を全額所得控除できるのが最大の特徴ですが、そのほかにも掛金を担保にして事業用資金を借入することもできます。
なお、「小規模」という名前のとおり、加入資格としては事業規模が小規模であることが要件となっています。
- 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合
常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
2. どの団体が運営しているのか
小規模企業共済の運営は「独立行政法人中小企業基盤整備機構(通称・中小機構)」が行っています。
起業時の経営相談や共済制度の運営、事業承継などの支援メニューを通して中小企業の成長のサポートを行っている、国の中小企業政策の実施機関です。
3. 支払い時のポイント
小規模企業共済の掛金は毎月 1,000 ~ 70,000円 の間で選択が可能です。
前述のとおり、掛金は全額所得控除が可能です。
個人事業主の方であれば、確定申告の際に1~12月の間で払い込んだ掛金を申告することになります。
生命保険などの控除証明と同じように、年末近くになると小規模企業共済の控除証明が郵送されます。
4. 受け取る際のポイント
掛金は事業を廃業する際などの退職金として受け取ることができます。
掛金を廃業時に受け取る際は、一括で受け取るか分割で受け取るかの選択が可能です。
一括で受け取る場合の税務上の取り扱いは「退職所得」であり、課税の対象となります。
しかし、退職所得には税制の優遇措置が取られており、共済の加入年数や掛金によっては税負担なしに受け取ることも可能です。
分割で受け取る場合は「公的年金等の雑所得」扱いとなります。
また、任意解約をした場合は一時所得扱いとなるなど、受け取り方や解約方法によって税法上の取り扱いが異なります。
5. 加入の手続きについて
個人事業主であれば確定申告書などの必要書類を用意して、金融機関の窓口などで行います。
取引のある金融機関などに、加入手続きが可能かどうか事前に確認されると良いでしょう。
6. その他注意点
小規模企業共済は解約理由や加入年数によって元本割れを起こすことがあります。
まず、加入から7年未満で任意解約をすると返戻率は80%となり、そこから加入月数に応じて返戻率が上がっていくことになります。
加入から240ヵ月以上経過すると返戻率は100%となります。
ただしこれは任意解約した場合の返礼率であり、個人事業を廃業した際は6か月以上加入していれば満額以上の金額を受け取ることができます。
まとめ
小規模企業共済は所得控除を受けながら退職金を積み立てることができる、経営者にとって非常にメリットの大きい制度だということがお分かりいただけたでしょうか。
美容業の場合、主力のスタイリストの退職等で業績が大きく変わることもあります。
無理のない範囲で掛金設定をして節税をしながら将来資金を蓄えると良いかと思います。