消費税の課税事業者と免税事業者

消費税の納税における課税事業者と免税事業者を解説

事業を営む上で、各事業者は消費税の観点から課税事業者と免税事業者の大きく二つに分類されます。
小規模の美容室でよく出てくる論点として「年間売上が1,000万円を超えたら消費税を納めなければならない」というものがあります。

多くの方が細かい部分の認識を誤っているケースがあるため、本記事に概要をまとめました。

目次

  1. 消費税の納税の基本的な流れ
  2. 課税事業者と免税事業者とは
    1. 免税事業者になるための要件
    2. 売上1,000万円を超えた場合
  3. 免税事業者を選択するよりも課税事業者を選択した方が有利な場合がある
  4. まとめ

1. 消費税の納税の基本的な流れ

課税事業者が事業を行っている場合、利益に対して発生する税金とは別に消費税を納税する必要があります。
国内で行われている取引の多くは、消費税の課税取引としてその支払う額の中に消費税が含まれています。

美容室で提供されるサービスもほぼすべてがこの課税取引に該当するため、売上として頂く料金の中には消費税が含まれています。
また、普段支払っている経費も課税取引に該当するものであれば、本体の価格とは別に消費税を支払っていることとなります。

年間を通してお客様から売上の一部として預かっている消費税と、経費の一部として支払っている消費税を集計し、その差額分を消費税として納税する必要があります。

消費税の納税額 = お客様から預かった消費税 ― 取引先へ支払った消費税

※上記計算は原則課税(本則課税)によるもの、簡易課税については別記事を参照

消費税の原則課税と簡易課税

2. 課税事業者と免税事業者とは

  • 課税事業者
    消費税の納税を義務付けられている事業者
  • 免税事業者
    消費税の納税を免除されている事業者

事業を営む上で、上記のどちらかの事業者に該当することになります。
免税事業者は売上に含まれる消費税を益税として手元に残すことができます。
そのため多くの方が免税事業者になりたいはずですが、免税事業者となるためには特定の要件を満たす必要があります。

2-1. 免税事業者となるための条件

免税事業者になるためには、小規模な美容室であれば下記の要件を満たしていればほとんどの場合、問題ありません。

個人事業の場合

  • 基準期間(前々年の1-12月)の年間課税売上高が1,000万円以下
  • 特定期間(前年の1月-6月)の課税売上高が1,000万円以下
    又は、給与の支給額が1,000万円以下

法人の場合

  • 基準期間(前々年の事業年度)の年間課税売上高が1,000万円以下
  • 特定期間(前年の事業年度の最初の半年間)の課税売上高が1,000万円以下
    又は、給与の支給額が1,000万円以下
  • 法人設立時の資本金が1,000万円以下

※詳細は【基準期間と特定期間】の記事を参照

消費税の基準期間と特定期間

2-2. 売上1,000万円を超えた場合

その年の売上高が1,000万円を超えたからといって、すぐに納税義務が発生するわけではありません。
基準期間の判定を元に考えると、1,000万円を超えた年度の翌々年度に消費税の課税事業者として納税義務が発生します。

そのため、1,000万円を超えた後も少しだけ免税事業者としての猶予があります。

3. 免税事業者を選択するよりも課税事業者を選択した方が有利な場合がある

場合によっては、免税事業者を選択できても「消費税課税事業者選択届出書」を税務署へ提出し、あえて課税事業者として事業を開始した方がお得な場合があります。

というのも、消費税(原則課税)の計算方式によると、売上で預かる消費税よりも経費で支払う消費税の方が多い場合は還付を受けられます。
免税事業者の場合には、そもそも消費税の概念が無いため、この還付が受けられません。

もし経費の支払いが多い見込みの場合は、還付を受けるために課税事業者を選択するというケースがあります。
美容業の開業初年度など、出店費用や内装工事で費用が多くなってしまう場合は、あえて課税事業者としてのスタートを検討する余地があります。

ただし「消費税課税事業者選択届出書」を提出した場合、2年間は選択を取りやめることができず、課税事業者に該当することになります。将来的な納税額を考慮したうえで慎重に判断する必要があります。

まとめ

  • 免税事業者になるためには特定の要件を満たす必要がある
  • 売上1,000万を越えた場合、課税事業者になるのは翌々年度から
  • 免税事業者を選択できても、課税事業者を選択した方が有利な場合がある

出典・参考サイト

国税庁|課税事業者選択の取りやめと簡易課税制度選択の制限

国税庁|No.6501 納税義務の免除


消費税の納税における課税事業者と免税事業者を解説