役員報酬 金額の決めかたと注意点

個人事業で美容室を経営されていた方が、会社を設立して美容室を経営する場合(法人成りした場合)、オーナーは会社の代表者として会社から役員報酬を受け取ることになります。
会社からすると支払った役員報酬は経費になりますが、一般の従業員の給与とは異なり、役員への支払いには注意が必要です。

役員報酬は会社法の手続きを踏めば支給はできる一方で、法人税法のルールを守って支給しないと、税金計算上は経費にできないことがあります。
今回は役員報酬に関する注意点と金額の決め方について解説していきます。

目次

  1. 役員報酬とは
  2. 定期同額給与
  3. 事前確定届出給与
  4. 役員報酬の決めかた
  5. まとめ
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1. 役員報酬とは

会社の役員が会社から受け取る給与が役員報酬です。
会社法上、役員報酬は株主総会等で決定されますが、多くの中小企業の場合、株主と代表者が同じなので、実際のところ代表者が自由に役員報酬の金額を決めることができるのが実情です。
自分で自由に金額が決めることができるうえに会社の経費にもできるとなると、利益が出たら税金が出ないように役員報酬を調整すればいいのでは、と考えてしまうかもしれません。
しかし、そういった利益操作を防ぐため、法人税法では役員報酬を税金計算上の経費とするための条件を設定しています。

役員報酬が税金計算上の経費となるには、次のいずれかに該当する必要があります。

  1. 定期同額給与
  2. 事前確定届出給与
  3. 業績連動給与

なお、いずれかの要件を満たしていても、不相当に高額な部分の金額は経費とすることができません。
③は主に上場企業等を対象としていますので、今回は「①定期同額給与」と「②事前確定届出給与」の内容を確認しましょう。

2. 定期同額給与

定期同額給与とは、役員に対して①1か月以下の一定の期間ごとに支払われ②支給金額が毎回同額であり③金額の変更が事業年度開始日から3か月以内に行われる給与です。
ざっくり言いますと、毎月同じ金額で1年間は変更できない、ということになります。

役員報酬を変更するタイミングは、一般的に会社の決算後の定時株主総会です。
そこで決めた金額で、原則として次の定時株主総会まで毎月同額で支給を行います。
このルールを守らなかった場合、税金計算上経費にならない部分が発生します。

ルールを守らず、定期同額給与に該当しない場合にどうなるか、具体的な金額でみてみましょう。

例えば12月決算の会社が2月の定時株主総会で代表者の役員報酬をそれまでとは変更なしで月額40万円と決定したとします。
その後、9月までは毎月40万円で支給を続けてきましたが、予想よりも大幅に利益が出る見込みとなったので、10月からは支給額を60万円に引き上げ、11月、12月も60万円を支給したとします。
会社法上は、きちんと手続きを行っていれば、事業年度の途中で役員報酬を改定することは可能です。
しかし、法人税法上は定期同額給与の要件からはずれてしまいました。

この場合、10月から上乗せした20万円×3か月分は、税金計算上は会社の経費と認められませんから、法人税がかかります。
一方で、会社の税金計算上の経費になってもならなくても、代表者個人として増額された20万円×3か月分は報酬として受け取っていますから、代表者個人には所得税や個人住民税がかかります。

3. 事前確定届出給与

事前確定届出給与とは、役員に支払う給与で①事前に税務署に届出を行い②届出内容どおりに支給するものをいいます。
役員に対する賞与だとイメージするとわかりやすいかと思います。

従来の法人税法では、役員に対する賞与は一切経費として認められていませんでした。
しかし会社法の施行に伴い、平成18年度税制改正で認められることになったのが、この事前確定届出給与です。
あらかじめ金額と支給時期を決めて届け出る必要があるものの、役員に対する賞与も、税金計算上の経費とすることができるようになりました。

事前確定届出給与を税金計算上経費にするには、きちんと手続きを踏んで支給をしなければなりません。
役員報酬は前述のとおり、一般的には決算後の定時株主総会で決定します。
定期同額給与をいくらにするかに加え、事前確定届出給与を支給するのであれば、このときに、誰に、いつ、いくら支給するのかを決定します。
支給内容が決まったら、税務署に届出書を提出します。
届出書の提出期限は株主総会で支給する旨を決議した日から1ヶ月以内もしくは事業年度開始から4ヶ月以内のいずれか早い日です。
そして届出を行った内容のとおりに支給を行えば、事前確定届出給与を税金計算上経費とすることができます。

4. 役員報酬の金額の決めかた

役員報酬の金額を高く設定すれば会社の利益が減って税額が抑えられますが、個人の所得が増えるので、所得税や個人住民税は増えますし、社会保険料の金額も増加します。
逆に会社の黒字を増やすために必要以上に役員報酬を低くしてしまうと、個人の生活に必要なお金が減り、困ってしまうかもしれません。
役員報酬の金額を検討する際は、会社の損益の見込みと個人で必要な生活費などの金額、2つの観点から考えていただくと良いかと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
役員報酬は一般の従業員の給与とは違い、注意すべきポイントがあることをご理解いただけたかと思います。
注意すべき点がある一方で、中小企業の場合は経営判断でどう支給するかを検討できる部分でもありますので、仕組みを理解してうまく活用していただければと思います。

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