キャリアアップ助成金の申請にも正社員への賞与支給が必須となったことから、賞与支給に関するご相談を多くいただいております。
中でも、従業員に賞与を支給するとき、天引きする社会保険料や源泉所得税をどのように計算したらいいの?というご質問が多いように思います。
賞与支給時の社会保険料や源泉所得税の控除額は、通常の給与と計算が異なるため、注意が必要です。
今回は社会保険料の控除額の計算にポイントを絞って解説いたします。
源泉所得税の控除額については関連記事をご覧ください。
目次 |
1. 賞与支給にあたっての手順
賞与を支給するために何をしたらよいのか、手順を整理しましょう。
賞与支給にあたっては以下の手順で計算を行います。
- 賞与の支給額面の決定
- 健康保険料の控除額の計算
- 厚生年金保険料の控除額の計算
- 雇用保険料の控除額の計算
- 源泉所得税の控除額の計算(別途「源泉所得税編」で解説します)
2. 賞与の支給額面の決定
まずは支給額面(以下、賞与額)を決定します。
支給基準は事業所によって異なりますので、人事考課制度などに則って調整を行いながら、自社の計算方式に従って算出してください。
3. 健康保険料の控除額を計算する前に…
次に健康保険料の計算を行います。
美容室や理容室の場合ですと、美容国保や理容国保に加入されている事業所もあるかと思います。
その場合は健康保険料の計算は不要ですので、この項目は飛ばして5のステップに進んでください。
当コラムでは協会けんぽに加入されていることを前提にして次の説明を進めていきます。
4. 健康保険料の控除額の計算
健康保険料は被保険者(ここでは賞与をもらう人)の年齢によって料率が変わってくるため注意が必要です。
まずは最新版の保険料額表をご覧ください。
従業員の年齢が40歳未満であれば「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」、40歳以上から75歳未満の場合は「~該当する場合」に該当します。
それぞれの場合の下に記載されている%を確認します。
%の数字は事業所と従業員の保険料負担割合の合計になりますので、この%の半分を計算で用いることになります。
例えば、東京都にある事業所が30歳の従業員に賞与額20万円を支給する場合、9.98%の半分の4.99%(※1)を標準賞与額(※2)に掛けます。
そこで求めた9,980円が当該従業員から天引きする健康保険料になります。
(※1)令和6年3月時点の料率です
(※2)標準賞与額…賞与総額(額面)から千円未満を切り捨てた金額
5. 厚生年金保険料の計算
次に厚生年金保険料の計算に進みます。
表の右上、「一般、坑内印・船員」と書いてあるすぐ下の%を確認します。
令和6年時点では18.300%の記載がありますので、例によってこの半分の9.15%を標準賞与額に掛けます。
先ほどの例で計算すると20万円×9.15%で18,300円が賞与額から控除する厚生年金保険料となります。
6. 雇用保険料の計算
雇用保険料の計算方法は通常の給与計算と変わりません。
賞与の金額(※3)に一定の被保険者負担率を掛けます。
美容業の場合は「一般の事業」に該当しますので令和6年4月時点では賞与額に0.6%を掛けます。
賞与額200,000円の場合、1,200円が賞与から控除すべき雇用保険料になります。
(※3)雇用保険料を計算する場合は、賞与額面に料率を掛けます(千円未満切り捨てはしない)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
社会保険料の計算が終われば、次に源泉所得税額の計算に進んでいきます。
なお、社会保険加入事業所は賞与支払届の提出も必要ですので、そちらもお忘れにならないよう、ご注意ください。